<第2回> BEST盤という商品について |
先日UPした【ロック名盤カタログ】コーナーで LED ZEPPELIN (レッド・ツェッペリン) のBEST盤 「REMASTERS」 を取り上げた。熱心な音楽ファンの中には、このようなBESTアルバムを否定する人が少なくないため、ここでベスト盤という商品について考えてみたい。
本題に入る前に、まず当サイトをご覧頂いている若人の方々にひとつ要望がある。それは、アルバムというのは決して曲の寄せ集めではなく、アルバム全体でひとつの作品であるという認識を持ってロック音楽を聴いて欲しいということだ。
ロック初心者には聞きなれない言葉かもしれないが、世の中には「コンセプト・アルバム」と呼ばれる作品が存在する。これは、収録曲すべてがあるひとつの共通したテーマにそったもので占められていたり、アルバムを通してひとつのストーリー仕立てになっているようなアルバムのことを指していう呼び名だ。しかし、このようなコンセプト・アルバムではないとしても、やはりアルバムというのは個々の曲の集まりではなく、ひとつの作品として完成されるべきものだと思う。
アルバムのトップに来るべき曲もあれば、最後に収録されるべき曲というのもある。またアナログ・レコード時代には、A面最後に来るべき曲やB面トップに来るべき曲というものもあった。アルバムの1曲目のイントロは、単にその曲のイントロではなくアルバムという作品の始まりに相応しいイントロであるべきだし、同様に最後の曲のエンディングはアルバムのエンディングとして相応しい終わり方をすべきである。
こうしたトータル的なアルバム作りは、ROCKの中ではポピュラー・ミュージックに近づくほど、希薄になる傾向がある。
極論かもしれないが、今述べたようなアルバム製作がされていないミュージシャンは、たいしたミュージシャンではないと判断してもそう間違いではないだろう。少なくともアーティスト(芸術家)ではない。
前置きが長くなったが、上記のようなことを念頭にBESTアルバムという商品を考えてみると、これはひとつの作品とは言い難いものになる。当然だ。複数のアルバムから曲を抜き取って寄せ集めたのがBEST盤なのである。収録曲は、作られた時期も違えばレコーディングされた時期も違う。場合によってはメンバーが違うことも珍しくない。BESTアルバムに一貫性を求める方が無理なのである。
では、BESTアルバムという商品は存在価値がないのだろうか?
必ずしもそう言い切れないところが難しい点で、例えばポップス、歌謡曲と呼ばれる音楽性のミュージシャンの場合は、BEST盤さえ所持していれば十分といえることが少なくない。歌謡曲界でのBEST盤とは、実際にはほとんどがシングル曲集となっており、それが結果的にBESTとの選曲だったりする。ハッキリ述べれば、J-POPなどと呼ばれるミュージシャンのアルバムは、ほんの一部の例外を除いて、シングルとして発売された曲以外はゴミのような作品であることが大多数である。洋楽では邦楽に比べればまだ随分マシだが、それでもポピュラー音楽に限れば傾向としては同じようなものだ。
つまり、歌謡曲のようなアーティスティックでないミュージシャンの場合、BEST盤一枚持っていれば、事足りるのである。
また、一貫性を持てないなりにも、曲順などを工夫して、アルバムの流れというものに配慮したBEST盤もある。
BEST盤の場合、単純に発表年順に楽曲を収録していくケースがよくあるが、そうした安易な決め方せずに、考えられた曲順をしている好例として、 QUEEN の 「グレイテスト・ヒッツ」 というBEST盤がある。これはタイトル通りシングル曲集であり、厳密な意味でのBESTアルバムではないが、曲順などに工夫の跡が見受けられ、特に 「グレイテスト・ヒッツVol.1」 では、オリジナル・アルバムで最後の方に収録されていた 「Bohemian Rhapsody」 が1曲目に来て、逆にオリジナル・アルバムでトップに配されていた 「We will Rock You」 ~ 「We are the Champions」 の流れが最後に収録されている。コレがまた悪くないのだ。このBEST盤の企画に携わった担当ディレクターの熱意が感じられる、新しい発想での斬新な曲順である。
また LED ZEPPELIN の 「REMASTERS」 に関しても、基本的に発表年順になってはいるが、通して聴いた場合に違和感のないように ジミー・ペイジ(g) 自ら曲順の決定を下している。
このように、BESTアルバムだからとひとくくりに価値がないと決めつける必要はないと思う。
コアで純粋な音楽ファンほどBEST盤を否定することが多いが、未知のミュージシャンへの入門編としては手っ取り早い選択肢であることは否定できない。BESTアルバムを聴いてそのアーティストのことが気に入れば、自然とオリジナル・アルバムにも手が伸びるだろう。それでイイと思う。
尚、余談になるが、BEST盤というアルバムは、出版側からすると非常にオイシイ商品だといえる。通常アルバムを販売するには、当然その中身となる音源を作成しなければならないが、BEST盤に関しては、すでに音源が完成している状態だからだ。
新たな曲・音源を作るには、物理面だけを考えてもレコーディングやミックス・ダウンといった作業が必要となり、例えばレコーディング・スタジオや使用機材のレンタル費用、またそれに携わるエンジニアの人件費といったものが発生する。BEST盤の場合、こうした費用が不要なのだ。つまり、初期投資費用がゼロに近い、利益率の高い商品だといえる。しかもある程度のセールスは見込めるだろうし。
だから何だというワケではないんだけどね。
<2005.4.7>
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