<第43回> HOEDOWN / エマーソン、レイク&パーマー1972年作品
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EMERSON,LAKE & PALMER (エマーソン,レイク&パーマー、 略して EL&P) の前身バンド NICE の時代から、 キース・エマーソン(key) の超絶的なテクニックやライブ・パフォーマンスは話題になっていた。クラシックやジャズを学んだ教養に裏打ちされた彼のプレイと音楽性は、当時のロック・シーンの裏側で異彩を放っていたといえるが、トリオ・バンド NICE を形成する他の二人は、技量的に彼のレベルに大きく遅れをとっていたことも、間違いのないことであった。
それを誰よりも理解していた キース・エマーソン(key) は NICE を解散させ、デビュー早々絶大な人気を博した KING CRIMSON から グレッグ・レイク(b,g,vo) を引っこ抜き、そして当時は決してメジャーなプレイヤーではなかった カール・パーマー(dr) を呼び寄せて、ロック史上最強のトリオ・バンドのひとつ EL&P を結成する。'70年のことだ。
以後 EL&P は着実に多くのロック・ファンを魅了していき、プログレッシブ・ロック界で押しも押されぬ存在へと登りつめることになる。
特にライブ演奏を収めた3rdアルバム 「展覧会の絵」('71) では、 ムソルグスキー の同名曲を大胆なロック・アレンジで昇華して、あらゆる方面からの絶賛と新たなファンの獲得に成功し、全英第2位を記録する大ヒットとなった。
そしてその絶頂の最中に発表されたのが、4th「TRILOGY」('72) である。今回取り上げる 「Hoedown (ホウダウン)」 は、その4thアルバムに収録されたインストゥルメンタル作品だ。プログレ界のミュージシャンとしては珍しくボーカリストとしても優れた才能を持つ グレッグ・レイク(b,g,vo) の唄は聴くことができないが、極めて EL&P らしい名曲のひとつで、 「展覧会の絵」 と同様、クラシック音楽からの転用である。
「Hoedown」 は、サイレンのごときサウンドに続いてファンファーレを連想させるキーボード・リフに突入してから、大演壇を迎えるエンディングまで、一気に駆け抜けるハイ・ボルテージな作品だ。
キース・エマーソン(key) の驚異的技巧派プレイは、トリッキーでエキセントリックでポップなものであり、この非常に親しみやすいフレーズに対して、適度なキメを配しながら カール・パーマー(dr) と グレッグ・レイク(b,g,vo) のリズム隊が喰らいつく。 EL&P の多くの楽曲を占めるこの音楽構成パターンはこの曲でも健在で、彼らならではの魅力を満喫できる。
最高傑作の選定が人によって意見の分かれることの多い EL&P の場合、おそらくどのアルバム、どの曲をご紹介しても、熱心なファンすべてが納得できるものにはならないと思われるが、 「タルカス」 や 「展覧会の絵」、 「悪の教典#9」 といった大作を除いた小作品の中では、 「Hoedown」 が最も彼ららしい楽曲なのではないだろうか。「とりあえあずEL&Pとやらを聴いてみようかな」という人には、オススメできる名曲だ。
また、ライブではアルバム・バージョンよりも速いテンポで演奏されるのが常で、時として爆発的なテンションを発散する曲でもある。私は EL&P の海賊盤(ブートレグ)を4枚ほど所有しているが、そのうちの1枚には、オフィシャル・ライブ盤 「LADIES & GENTLEMEN」('74) 収録のテイクとは比較にならないほど、エネルギッシュな演奏の 「Hoedown」 が収められている。興味のある方は、失敗を覚悟で海賊盤を買いあさってみて欲しい。
キース・エマーソン(key) の技量は、ロック界では異様に突出したものだった。
キーボードに限らず、当時テクニシャンとされていたロック・ミュージシャンの多くが現代のレベルからすると大したものではない中にあって、彼の演奏技術は現在でも通用する驚異的なテクニックを有していた。
当時 キース・エマーソン と比較される鍵盤奏者は、常にJAZZ畑のミュージシャンばかりで、実際に彼はJAZZファンからも支持を得てスウィング・ジャーナル誌のオルガン部門人気投票で第3位にランクインされたこともある。
このバカテクと、肉体的にアジア人には望むべくもないバカデカい手を駆使して、ハモンド・オルガンからピアノ、アナログ・シンセに至る、あらゆる鍵盤楽器を自在に操ったキーボード・サウンドを前面に押し出したのが、 EL&P の音楽的スタイルだった。
キース・エマーソン(key) の技術と比べると、 カール・パーマー(dr) のレベルが劣っていたことは多くの方が指摘される通りではあるが、個人的には、彼の洗練されていないドタバタとしたドラムは、 キース のプレイと非常に相性が良かったように思う。 EL&P は'79年に正式解散した後、 RAINBOW や WHITESNAKE など数多くのバンドを渡り歩いてきた コージー・パウエル(dr) を迎えて、'86年に EMERSON,LAKE &POWELL (エマーソン,レイク&パウエル、 略して EL&P!) として1枚のアルバムを発表したが、そのとき「やっぱ キース・エマーソン には カール・パーマー やな」と痛感した。何か面白みにかける違和感が、そのアルバムにあった。
EMERSON,LAKE & PALMER には、この三人でしか産み出せない奇妙な「味」があったのだと思う。
EL&P の音楽に対するアプローチは、ワイルドでダイナミック、すなわちロック的なものだった。
プログレ・バンドの多くが文学的な詩や哲学的なコンセプトを売り物にしていたのに対し、EL&P は愚直なロック・スタイルを貫いた。精神性に重きを置いた内向的なものが「深み」と「知性」を演出したプログレ界において、彼らのストレートで刺激的な楽曲やパフォーマンスは、ともすれば場違いですらあった。
様々な音色と超人的な演奏技術を前面に押し出し、ステージではオルガンにナイフや日本刀を突き立て、時にはピアノの下敷きになる。その結果誕生する楽曲は、躍動感とダイナミズムに溢れた豪快な作品。
EL&P の音楽性とは、簡潔に表現すればハード・ロックの方法論であった。どこか力技的な、非プログレッシブなものだった。その産物である彼らの作品が、どう聴いてもプログレッシブ・ロックであり、また彼らが「プログレ四天王」に数えられるほどプログレ・ファンから絶大な支持を得たことは、ある意味凄いことだったように思える。
EL&P には、精神的「柱」となる人物がいなかった。音楽面では明らかに キース・エマーソン(key) がイニシアティブを握ってはいたが、 KING CRIMSON の ロバート・フリップ や、 PINK FLOYD の ロジャー・ウォータース のような、バンドやその延長上にある楽曲のコンセプトを決定づける精神面でのリーダーはいなかった。
だから彼らの作品は、重圧のない、聴きやすいものとなりえたのである。
今回ご紹介した 「Hoedown」 も、そうした「聴きやすい」曲のひとつだ。プログレだからと構える必要は何もなく、またプログレを聴いたことがない人でも充分堪能できる、易しくて質の高い名曲である。
「プログレ四天王」の一角 EL&P の世界を、是非一度は体験してみて欲しい。ロック初心者でも理解できる、数少ないプログレ的名曲のひとつが 「Hoedown」 である。
<2006.2.22>
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